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中流サラリーマンがセミリタイアを目指すブログ

米国株投資における二重課税問題

市場規模や過去のリターン、連続増配銘柄の数などを見ると、投資に最適といえるのが米国の株式市場です。ただし日本からの米国投資には1つだけ欠点があります。それが配当への二重課税問題です。

米国株投資における課税制度 

キャピタルゲインに関わる税金

米国株式の売買については、日本株と変わらず同じ税率が適用されます。売買に関わる税金、すなわち譲渡益税は20.315%です。内訳は所得税:15.315%、住民税:5%です。譲渡益税に関してはアメリカで源泉徴収されることはありません。

売買益 × 0.79685 = 最終売買益

(税金:20.315%)

インカムゲインに関わる税金

問題はこちらです。米国株式の配当については、二重課税が適用されます。米国株の配当金は最初にアメリカで10%の現地課税が、更に日本で約20%の課税が適用され、最終的な手取り配当金が大きく減ってしまいます。

配当金 × 0.9 × 0.79685=最終配当金

(税金:28.2835%) 

配当に10%の外国源泉徴収税がかかるため、手取りが約72%になります。仮に5%の配当がでたとしても、課税により手取りが3.6%まで減ってしまう計算です。

ただし、二重課税は確定申告を行うことで取り返すことが可能です。

国税額控除を活用する

確定申告を行い外国税額控除を利用すれば、配当の二重課税分を取り戻すことが可能です。ただし現地課税の10%が完全に還付されるわけではなく、以下の計算により控除額が決定します。

所得税の控除限度額=所得税額 ×(調整国外所得金額/所得総額)

イメージしにくいので具体例を挙げて考えてみます。

年収500万円(額面)、年間配当30万円のケース

所得総額:500万円(年収) - 263万円(所得控除) +30万円(配当) = 267万円

所得税:237万円(課税対象額) × 10% - 9.75万円 = 13.9万円 

  所得控除と所得税の計算は、下記のサイトで簡単に調べることが可能です。 

住民税&所得税の計算|年収200万〜800万だと年間いくら?【2018年版】|サラリーマンの税金計算してみたブログ

年収500万円の場合・・・

・給与所得控除:500万円 × 20% + 54万円 = 154万円

社会保険料控除:500万円 × 14.22% = 71.1万円

基礎控除:38万円

所得税控除:263万円(課税対象は500万円 - 263万円 = 237万円となります)

上記の結果を踏まえて、控除限度額を算出します。

所得税の控除限度額

所得税額 ×(調整国外所得金額/所得総額)

=13.9万円 ×(30万円/267万円)= 1.56万円

今回のケースでは配当30万円にかかる外国税(10%)が3万円です。およそ半分の税金を取り戻すことができ、還付率は約52%になります。

年収500万円、年間配当60万円のケース

所得総額:500万円 - 263万円 +60万円 = 297万円

所得税の控除限度額=13.9万円 ×(60万円/297万円)= 2.81万円

6万円に対して2.81万円のため、還付率は約47%です。年収に対して配当の割合が大きくなると、還付の割合も減少します。

年収1000万円、年間配当30万円のケース

所得総額:1000万円 - 400万円 +30万円 = 630万円

所得税:600万円(課税対象額) × 20% - 42.8万円 = 77.2万円

・給与所得控除:1000万円 × 10% + 120万円 = 220万円

社会保険料控除:1000万円 × 14.22% = 142万円

基礎控除:38万円

所得税控除:400万円 

 

所得税の控除限度額

所得税額 ×(調整国外所得金額/所得総額)

= 77.2万円 ×(30万円/630万円)= 3.68万円

配当30万にかかる外国税(10%)が3万円のため、控除限度額以内に収まりました。全額還付が可能です。年収が高い人(=所得税の高い人)は、より多くの還付金がもらえます。

まとめると 

・年収に対して配当の割合が大きいほど還付割合が減少する

・年収が高いほど還付の上限が増加する

となります。感覚としては10%課税分の半分程度を還付される人が多いのではないでしょうか。年収と配当の額により控除額は増減するので、一概には言えないのですが。米国株投資を実践されている方は、一度は確認すべきポイントだと思います。

セミリタイア後は所得が減るため、還付に期待してはいけないことが計算からわかります。こういった点も含めて、計画的なセミリタイアプランを作成しなくてはなりません。

 

 

注)厳密には外国所得税の額が所得税の控除限度額を超える場合、+αで還付があります。①控除対象外国所得税の額から所得税の控除限度額を差し引いた残額、②復興特別所得税の控除限度額、①と②で金額の少ないほうが加算されます。また所得税の控除には保険料控除等も含まれますが、簡便のため省略しました